◆あらすじ◆

 

 ――初めての『営業』。

 

 出来ないと言わないのか、出来ないと言えないのか分からないまま始まる最初の『仕事』。

 

 ――右も左も分からぬまま放り出されて、臨機応変に対応しなければならない状況に追いかけられる。

 

 例え誰かに成りすまそうと、その人に被害が起ころうと、見方を変えて1円でも収益が入ればそれは営業にとって成功と捉えることができる。

 

 ――それは、得?

 

 不条理な仕事と分かっていても、将来の利益に繋ぐ仕事をこなさなければならない。

 

 ――それは、損?

 

 絶望する社会に希望はなく、希望がないから絶望を悲観しない。

 まるで一つの社会と合わせ鏡のようなもの。

 自分の心を映す『鏡』そのものだ。

 社会に媚を売り続けた自分を『鏡』に通すと、裏では都合のいい人物として抹殺されていた。

 気付かなければ幸せだった。気付いたら不幸だった。

 社会はそんなに優しくはないと、他人は誰も助けてくれないと思っていた。

 

 それでも、俺は営業職として働いている。

 縁も所縁もなかった薬局店で、一般の社会人として働いている。

 そこに幼馴染がいて、しっかり者の部長がいて、変わりものの開発部博士がいて、無口な設計課長がいて、見習いの年下がいて、すべてを取り仕切る支配人がいて、

 良い関係を築きたいと思う人たちが社内にいる。

 本当に運が良かったとしか思えないが、人生はそれくらい運とタイミングが絡むものではないだろうか。

 それくらい、人生とか気楽なものではないだろうか。

 それくらい、人生に意味はあるものだろうか・・・?

 偶然だけが人を救える。

 もし、このくらい気楽に考えるなら、俺は後者を押したい――。

 卵が先か鶏が先かなんて論理もまったく役に立たない。

 

 ――出会ったのが先か、出会うと予感したのが先か。

 

 俺と彼らの出会いは偶然という必然だった。 

布施義也

  • 年齢

    15歳

  • 血液型

    A型

  • 身長

    160cm

  • 体重

    48kg

『鏡』編の依頼主。いつも一人でいる陰キャにしてアイドルヲタク。特に神保町を中心に発足したアイドルグループJBT46の1人、円谷良子を追いかけている。

 彼女と付き合いたくてどうしようもなくなり、エムシー販売店に連絡を入れるほどの行動派でもある。癇癪もちで、思うようにいかない苛立ちが続くと爆発して我を忘れて暴れ回ってしまう。

「大金払ったわりに会っても数十秒で満足できると思う?」


円谷良子

  • 年齢

    18歳

  • 血液型

    A型

  • 身長

    159cm

  • 体重

    45kg

『鏡』編ゲストヒロイン。神保町を中心に発足したアイドルグループJBT46の1人。全国的に知名度を上げており、大手音楽事務所へ移籍の話もあるという。

 厳しい下積み時代もあり、大変な仕事でもなんとか乗り切ろうとする頑張り屋さん。自分の思っていることは表情に出さず、気を許す人にしか相談しない点がある。

 実は大型二輪免許を持っており、休みの日はバイクで全国に行ったりしている行動派。

「こんにちは。はじめまして。円谷良子です」