――グレイヴとはなに?

 

(フェルミのへや第三話『グノー“名刺”』の説明と軌跡)

「博士。次はグノー商品『名刺』についてよろしくお願いします」
「もともと『名刺』というものはなく、『カード』として作っていたものや。召喚をコンセプトにした商品は召喚獣という子供心を揺さぶる商品として生みだして相手を読み出したり分身させたりできたんや。それがいつの間にか大人が使うようになって名前を変えた経緯がある。それまでは遊び感覚だったものや」
「そうだったの?子供の趣味に嵌っちゃう大人って・・・」
「『カードを集めて仲間を増やそう!』なんて謳ったらバカ売れ!お札を刷っているようだったぞ!うひゃっひゃっ!」
「これが社会をダメにしているんだ・・・」
「せや。それじゃあうちもいけない思うたんや。やっぱり『カード』遊ぶ層をターゲットにするより、真面目に働く大人をターゲットにせなあかんと思うて、『カード』を基盤にして作り直したんや」
「えっ。それが『名刺』なんですか?」
「そうや。『名刺』は自分という商品を紹介するものや。『名刺』に描いたことがそのまま自分に反映される代物や」
「はえ~。就職でも役立ちそうですね」
「こらこら。嘘はいかんで。そんなことしたら後で自分の首を絞めることになるで」
「違うんですか?」
「相手には反映されるが自分の能力は変わらへん。身の丈に合っていないことを望んでも無駄言うことや。いきなり素人がプロになれるかい。そんな都合のいい道具はどこ探してもないで」
「でも、『名刺』に描かれたことを誰も疑問に思わなくなるだけで疑われなくなることは違いないですよね?ウソも貫き通せば真実になるし、時間があれば素人だってプロになれますよ」
「健気やな~。いつかバレる嘘におびえながら生活するくらいなら、下っ端として怒られながら生活した方が気持ち楽になると思うけどな、うちは」
「度胸があれば何でもできますって。早いうちに先駆者になって後輩が付けば、自分の意見を言いやすくなります。今の社会は団塊世代が牛耳ってて若い技術者の芽が潰され――」
「余計なこと言わんでいい!うちが怒られるやろ!」
「話を戻しますが、相手を誤認させる日常変化な商品というわけですか?」
「そういうことやね。名前、性別、性格、年齢、職種すべてを弄ることも出来る。周りの環境が自然に対応する代物や。やろうと思えば実際に存在している人物に成りすますことも出来るで」
「でも、実際は『名刺』に描かれたプロフィールが自分の紹介になっていて自分の身は何も変わっていないと。これは相手にも適用するんですか?」
「まあ、『名刺』を受け取った相手に影響を与える代物やから、できんことはないな」
「『名刺』の交換なんてしたらどうなるんでしょう!」
「お互いの姿が入れ替わるわけや」
「って、実際の姿は変わってないけどな。その場合は立場が入れ替わるわけや。立場が変われば自然とやるべきことも変わるやろな。まさしく日常が変化する商品いうことや」
「立場交換。上手く使えば甘い蜜が吸えそうな気がします」
「新人より甘い場所があるわけないやろ!はよう仕事覚えてうちを楽にさせてもらいたいわ」
「そんな博士のために私が博士の『名刺』を用意しました」
「うちの?どんなや?」
「なんやねん、これ?職業魔法少女ってなんなんや!年齢14歳じゃ酒も煙草もでけへんやないか!今すぐ描き直さんかい!」
「はえ~。博士って14歳の姿は別人ですね。このステッキ持ってくれたら本物の魔法少女です」
「なんや、あんたうちの何が見えてんねん?いやあぁぁ!!14歳のうちの黒歴史を覗かんといてやー!!」

――魔道具NO,03『名刺』

『名刺』と謳っているが、実際はその紙が効力を持つ。

『描かれていることが常識になる』ため、常識変化、視覚変化、認識誤認、立場入れ替わ りなど使用多様。

やがて、『カルテ』や『カードゲーム』にまで発展する。 『MC―meic―』要素が高い商品というダジャレに気付いてくれた方は少ない。

『名刺入れ』という魔道具も販売していたときがある――